2025年04月18日 15:54

吉本光希明治大学農学部教授らの研究グループは、植物に接木を実施したときに生じる傷の修復過程にオートファジーが関与していることを発見した。

オートファジーは真核生物に見られる細胞の分解機構の一つであり、そのメカニズムの解明によって大隅良典博士が2016年、ノーベル生理学・医学賞を受賞している。オートファジーでは細胞内の小器官(オルガネラ)やタンパク質などの成分を細胞内の分解コンパートメントに輸送して分解される。これによって分解された物質は新たな細胞成分の構成に再利用されると考えられている。

一方、接木は二つ以上の植物個体を人為的操作によってつなぎあわせて育成する、有史以前より利用されてきた農業技術。その成立には個体間の自他認識、傷口からの病原体等の侵入抑制、組織の脱分化、カルス形成、細胞間の癒合、通道組織の再構成など、多数の生理応答が関わっていると考えられるが、まだまだ不明な点が多い。

今回、傷口の修復過程において、特に切断面の上側の細胞群がオートファジーによる自食作用で分解を受けることが新たなカルスの形成を促し、接木の成立に寄与することを示した。これにより接木や、植物の傷修復時に起こる生理現象の一端が解明され、植物の傷害応答についての理解や、接木の農業利用のさらなる応用につながることが期待される。

本研究成果は、4月12日に国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載された。