2024年12月25日 15:41

千葉大学の研究チームは、N-ハロゲン化スクシンイミドを用い、アルケン基質のハロゲン化と、窒素を導入するイミド化の両方を同時に行う触媒の開発に成功した。

ハロゲンとは、周期表で第17族に位置する非金属元素で、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、アスタチン (At) の5元素を指し、様々な金属と塩を作る。海に囲まれた日本は塩の宝庫であり、ヨウ素の世界生産の約3割を日本が占めるなど、ハロゲンは日本の誇る貴重な天然資源。

また私たちの体内や動植物の世界で、電気陰性度の大きなハロゲンが含まれる有機化合物は、特異な生物活性を発現すると期待され、医農薬の開発に多彩に用いられてきた。そのため、ハロゲンの新しい機能を基礎研究から見出し、付加価値の高いハロゲン製品の開発に繋げていくことは、大変重要となる。

これまで、ハロゲンを有機分子に導入する方法として、特殊なハロゲン化試薬をアルケン基質に作用させ、外部から他の基質を導入させる手法が用いられてきた。しかしこの方法では、スクシンイミドなどの、ハロゲン化試薬由来の廃棄物が生じてしまう問題があった。

今回の研究では、従来は困難だったハロゲン化試薬を、ハロゲン化と窒素化の双方に用いる高立体選択的な触媒反応の開発に成功した。緻密な触媒設計と反応解析に基づいた学術研究に加え、廃棄物の少ない有機化学の実践として、現代の環境問題の解決にも貢献する研究となる。