2024年12月16日 15:22

慶應義塾大学医学部、および自治医科大学の研究グループは、社会的孤独が動脈硬化を促進させる新たな分子機序を発見した。

今回研究チームは、社会性のあるマウスでも特に「絆」が深いとされる同胞マウスに限定して実験を行い、社会的孤独ストレスの影響を臓器横断的に検証。その結果、社会的孤独ストレスが動脈硬化を進行させることを発見した。

その機序として、脳視床下部で産生されるオキシトシンによる肝細胞を介した脂質代謝制御機構が破綻することが原因であることが明らかに。オキシトシンはCYP7A1を介した胆汁酸の生成によるコレステロール排泄と中性脂肪の分解という二つの機能を併せ持ち、全身の脂質代謝を制御していることを見出した。さらに、オキシトシンを経口補充することで、社会的孤独による脂質代謝異常と動脈硬化が抑制されることを確認した。

オキシトシンは「幸福ホルモン」として社交性や感情の制御、乳汁分泌、子宮収縮などに関与していることが知られている。今回の研究によって、オキシトシンの新たな機能だけでなく、オキシトシンが脳と肝臓を結ぶ重要な鍵分子であることも明らかとなった。

現在臨床の現場で主に使用されている脂質異常症の治療薬に、胆汁酸生成促進やLPL活性の改善を機序に持つものはない。オキシトシンが、特に社会的孤独による動脈硬化進展に対する新たな治療標的として期待されるのみならず、社会的つながりや「絆」が動脈硬化の原因となる脂質異常症の予防に重要であることが改めて強く示唆される。