2022年11月17日 15:29

山形大学硯里研究室は、印刷や塗工が可能なウルトラ・ハイバリアを開発した。バリア技術は広く産業に用いられているが、その多くが水蒸気もしくは酸素に対するバリア技術。真空成膜法で得られるバリアは、その手法や構造にも依存するが、水蒸気・酸素を透過しないガラス並のバリア性能の達成が可能。しかしスループットが悪く高価であり、低コスト化が可能な印刷・塗工によるバリア性能は低いという課題があった。
本研究ではプレカーサーを印刷・塗工し、真空紫外光を照射することで緻密な無機膜を形成、高いバリア性能を達成した。このバリア性能は、これまでの性能を1桁以上更新するもので真空成膜に迫る性能である。また光学的に透明であること、屈曲性があることに加え、印刷・塗工プロセスであることから低コスト化・低炭素化が可能であることも大きなメリットと言える。
これらの成果の論文掲載ならびに特許出願が完了した。水蒸気バリア性能は、特にSociety5.0の達成に向けIoTデバイスが急増する中、デバイス保護のためのバリア技術は今後も要求が高まると予想される。真空成膜プロセスから印刷・塗工プロセスに変更することで低コスト化だけでなく、低炭素化にも寄与できる。
「欲しい場所に欲しいバリア」の実現を目指し、インクジェットプロセスによるバリア膜研究も進行中。バリア技術は幅広く応用可能であり、OLEDやセンサ、太陽電池、リチウム二次電池のようなデバイスだけでなく、包装分野等にも展開を進める予定。