2025年01月31日 19:43

熊本大学大学院の研究チームは、深層学習によるバーチャル染色法により、明視野顕微鏡画像からラベルフリーで植物細胞の形態や状態を高精度に解析する技術を確立した。この技術により、従来必要とされていた蛍光染色を行わずに、明視野顕微鏡画像のみから植物細胞構造の特異的な可視化と分析が可能になった。
研究チームは、タバコの培養細胞を対象に、細胞膜や核などの細胞構造を深層学習モデルによってバーチャルに可視化することに成功。また、バーチャル染色した画像を用いて、シロイヌナズナの葉表皮細胞の形態、葉緑体の動態、細胞生死判定などの様々な解析を行い、本技術の多様な応用可能性を確認した。特に、葉緑体の動態を時間経過観察で高精度に追跡できる点や、生細胞と死細胞を正確に分類できる点が注目される。
本研究の成果は、バーチャル染色法が蛍光染色の課題である光毒性や蛍光退色を克服しつつ、細胞生物学研究において非侵襲的かつ効率的な解析を可能にする新たな手法としての可能性を拓くもの。本研究成果は、1 月31日、科学雑誌「Plant Molecular Biology」に掲載された。
本技術は、植物細胞生物学における顕微鏡解析の新たな手法として、多様な細胞種や研究テーマへの幅広い応用が期待される。特に、蛍光染色が困難なサンプルや動的な細胞現象の解析においても有効であり、細胞生物学や分子農学の分野において、新たな知見の創出と研究の発展が大いに促進されることが期待される。