2024年10月17日 15:39

京都大学の研究グループは、生きた細胞にナノ粒子を貫通させることで、ナノ粒子の表面に生細胞由来の生体膜を効率的にコーティングすることに成功した。

人工的なナノ材料は、自然界には存在しない独自の光学特性や磁気特性を持ち、診断・治療への応用が期待されている。しかし、体内に導入した際の拒絶反応や副作用が課題であり、安全に目的の細胞や器官へナノ材料を運ぶ方法の確立が急務。

一方、人間の身体には、エクソソームなどの生体ナノ粒子が存在し、細胞間のコミュニケーションツールとして機能している。生体ナノ粒子は生体膜に包まれた構造を持ち、優れた生体適合性や免疫回避能力を発揮する。本研究では、この生体ナノ粒子に着想を得て、生きた細胞由来の生体膜と人工ナノ材料をナノレベルでハイブリッド化する新しいモノづくりのアプローチを実現した。

従来のコーティング法では細胞を破壊して膜成分を抽出するため、膜の構造が損なわれ、コーティング効率が低いという課題があった。そこで、ナノ材料を「生きた」細胞の濃縮層に遠心力で直接通過させるというシンプルなアプローチを用いて、生体膜の特性を損なうことなくナノ材料に付与することに成功した。

この技術は、ナノ材料の医療応用における課題を克服するための新たな戦略であり、創薬・治療分野において革新的なバイオナノテクノロジーの基盤となることが期待される。今後は、この技術をさらに発展させ、ドラッグデリバリーシステムやセラノスティクスへの応用を進めていく予定。