2022年01月07日 19:39

東大発サンゴベンチャー企業のイノカは、1月6日、人工的にサンゴ礁の海を再現した閉鎖系水槽(東京虎ノ門)で、サンゴの抱卵時期のコントロールに国内で初めて成功した。今回、再現性の高い完全人工環境下での抱卵実験に成功したことにより、自然界では多くのサンゴ種が1年に1度と限定的な抱卵を、人為的に導くことが可能となった。さらに国内初となる2022年の完全人工環境下におけるサンゴ産卵成功に向けた実験を継続中。

世界のサンゴ礁の経済価値は、期間50年で推定8000億ドル(日本円で約93兆円)と言われている。しかし、20年後には気候変動に伴う海水温の上昇によりサンゴ礁の70~90%が消滅する可能性が高いと言われており、海の生物多様性やそこからうまれる経済価値を守るためにサンゴ礁の保全は最重要課題。

イノカでは、独自技術である環境移送技術により、完全人工環境下においてサンゴの健康的な長期飼育に成功している。完全人工環境とは、人工海水を使用し、水温や光、栄養塩等のパラメーターが独自IoTシステムによって管理された水槽(=閉鎖環境)を指す。

さらに今回の実験は、環境移送技術を活用し沖縄県瀬底島の水温データを元に、自然界と時期をずらして水温を同期することで、抱卵時期のコントロールに成功。本実験が進むことで、何世代にもわたって研究調査を行うモデル生物としてサンゴを扱うことができるようになれば、サンゴの基礎研究が大きく進み、サンゴ保全に寄与すると考えられる。